昨日放送された BSプレミアム 「北斎の滝 Vs 30人のツワモノ」に、僕は釣り師10人の中の1人として参加させていただきました。

制作会社の担当者様より「釣り師の目線で北斎のきりふりの滝を見てつぶやく、意見を出す」といったご依頼をいただきました。

僕は船に乗り沖に出て釣りをする「船釣り師」ですから、その目線できりふりの滝を見て、ジックリと想いを巡らせたのでした。

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この浮世絵を見てまず思ったことは、「水が流れ落ちる様を表した滝」であるのに、その「水が重力に反して隆起しているように見える」ということ、それが屋久杉の地表に露出した巨大な木の根であるように見え、それはマングローブの根のようにも見て取れました。

それにおどろおどろしい色使いにも気が付くのですが「水の隆起」に着目、船釣り師として「黒潮の隆起」に重ね合わせてみました。

収録中僕は

「船釣り師として、この滝の水の盛り上がって見える様を、『黒潮の隆起』に重ねて考えてみました」

と述べさせていただき

「黒潮とは、日本では九州の南の海域から四国沖、紀伊半島沖を通り、関東、千葉県沖で親潮とぶつかる『外洋に流れる巨大な河』とも言える海流れです。
その大きさは、幅は約100km、深さは1500m前後、早い場所では時速7キロ以上の流れがあり、水温は高いが為にプランクトンなどは生息できす、透明度が高い水色の為青黒く見えることから『黒潮』と言うそうです」

と黒潮についてご説明し、次に

「そんな物凄いパワーがある黒潮のこと、中央部が周辺海域と比べて5メートルほど盛り上がっているのだそうです。
でも考えてみて下さい、黒潮の幅は100kmあるのですから、黒潮の端から中央部までの50kmで5m盛り上がっていると考えると、黒潮の端から100mの場所では1cmしか盛り上がっていない計算となり、実際の海上は水平な大海原に見える筈なのです」

と一気に解説

「ですから、きりふりの滝のように、あたかも消防車の放水ホースを幾筋も並べたような、水がありえない隆起をしながら落ちて行く滝は実際には存在しないのです」

と自分の考えを述べ、その裏付けとして

「では、北斎は何故ありえない滝の絵を描いたのでしょうか? 
こういった考え方はどうでしょうか。
僕は絵画に関してはあまり詳しくはないのですが、海外ではダリであるとか、特にピカソなど、一見何を書いているか全く分からない絵画、抽象的な絵も見受けられます。
どうしてでしょうか?
人間は、今まで見たこともないもの、自分の知識を大幅に超えるものを見てしまったとき、つい見入ってしまうものなのです。
たとえば冬、電車に乗っていてトンネルに入ったとします。『トンネルを出るときっと、真っ白な雪国だな・・・』など想像しながら迎えるトンネルの出口、そこを出るとハワイのような南国だったらどうでしょう? ついつい見入ってしまうはずなのです」

と続け、最後に

「ですから北斎は、そういった『つい見入ってしまう効果』を狙った滝を書いたのではないか。
はたまた滝を北斎の遊び心で書いたのかは今となっては分からないですが、『天才北斎は実際にはありえない滝を描き、その絵に見入ってしまう効果を狙ったのではないか』」

と締めくくりました。

当然つぶやきではなくお話し、トークとなってしまったので、時間の都合上放映させませんでしたが、一船釣り師の目線として、こんなことを考え撮影に臨んできました。